色冴える、自然のめぐみ

日差しがだんだんと暖かくなってきました。
まだまだ寒さは感じますが、春はもうすぐそこまで来ているかの様です。
朝から開始する味噌作りにも、水の冷たさのちょっとしたゆるみを感じられるようになりました。
作業が終わり並んだ味噌樽は、澄んだ空気のなかで静かに醗酵を待ち、天井や梁に長年染み込んだ麹菌なども、成熟を促していきます。どこかその姿に神聖さをみてしまうのは、人の力はここまでとして、後は自然の力にお任せしているからかもしれません。

この寒さ厳しい時期に作る味噌は「寒仕込み」といい、家庭では昔から一年分を作っていました。1月からの寒い時期に仕込み、時間をかけてゆっくり発酵をうながします。気温が下がる頃には深みがでて、おいしい味噌になります。

凍るような冷たい水を蛇口から出したときに、澄んでいると感じるときはありませんか。
この水が寒仕込みには重要な要素。
二十四節気にある「小寒」と「大寒」の間を「寒」や「寒中」といい、その期間中に汲んだ水を「寒の水」といわれます。一年で最も質が良い水とされ、食材が腐ることなく保存できると昔から伝わっています。
水の冷たさは染色にも関係し、こちらは「寒染め」として無地や黒などの染め上りを美しく仕上げてきたようで、寒中に染められた鯉のぼりなどは、色あせがしにくいといわれています。

味噌も成熟が進むと濃い色に変化していきます。自然の力に昔からの知恵と時間をかけて、作り出された味噌の美味しさ。
この絶妙なバランスをかけあわせた味噌を『紅白合わせ味噌』として年末より発売しています。昨年に仕込んでじっくり熟成し旨味を引き出した赤味噌と、そこに糀の香りと上品な甘味の白味噌を調合させました。

味噌樽を確認するたびに小さな変化をみせる色は、ぬるむ水のように仕上がりを待つ心に密やかに送ってくれる、味噌からの美味しさの合図です。